Methodology
Proofseal はどう検査するか
このページでは、Proofseal が計測結果をどう検査するか、しきい値をどう決めるか、判定がどう生まれるか、判定をいつやり直すべきかを説明します。手法は公開されているので、ご自身や上司が自分で確認できます。
ひとつの計測の問いがたどる道
どの問いも同じ手順を通ります。各ステップで何をしたか、何に基づいたかは記録に残ります。
- 1データ週次の費用と成果を取り込み、バージョン付きのデータとして保存する
- 2チェックモデリングの前に、データがその問いに答えられるか確かめる
- 3計測チャネルごとの効果を推定し、どの数字にも幅を付ける
- 4検証正解の分かるシミュレーションデータでモデルを試し、推定がどれだけ正確かを見る
- 5判定事前に書かれた判定ルールがエビデンスを判定に対応づけ、理由と制約を添える
4 種類の検査
検査は 4 つに分かれます。どれも一つずつ確認できる具体的な問いで、最後に 1 つのスコアにまとめることはしません。

データチェック
何週分のデータがあるか、どの週が欠けているか、費用に増減があるか、どのチャネルが常に一緒に増減するか、どのチャネルが長期間費用ゼロか。データで答えられない問いがあれば、後のステップでそのまま示します。
- 履歴の長さと欠損週
- チャネル別の広告費の変動
- チャネルが一緒に増減するか
- ゼロ出稿期間

モデル診断
モデルを実行した後、まず基本的な数値を確認します。学習に使っていない期間をどれだけ説明できるか、チャネルを区別できるか、範囲を何回計算し直したか、季節の起伏を取り除いたか。それぞれに単位、しきい値、しきい値の出典を付けます。
- 学習に使っていない期間の説明力
- チャネル間の効果を切り分けられるか
- 幅が安定して計算されているか
- 季節の増減を差し引いているか

シミュレーション検証
お客様のデータ条件に近いシミュレーションデータでモデルを再実行します。シミュレーション内の各チャネルの答えはこちらで設定するため、既知です。確認するのは3点です。モデルが90%の確信を示すとき範囲が既知の答えを何割含むか、各チャネルの推定が既知の答えとどれだけずれるか、チャネルの順位が正しいか。どの設定がデータ由来で、どれが前提かは次の節に示します。
- 示した確信度と実際の的中率
- チャネルごとの推定がどれだけずれるか
- チャネルの順位が正しいか
- シミュレーション条件をあなたのデータに合わせる

判定ルール
判定はあらかじめ書かれたルールから作られ、その場で人が決めるものではありません。各ルールにはしきい値の出典を明記し、同じ証拠に同じ版のルールを当てれば必ず同じ判定になります。判定は作成後に変更されず、データやルールが更新されると新しい判定が作られます。
- ルールにバージョン番号(現在 v0.1.0)
- すべてのしきい値が出典を名乗る
- 判定は変更不可
- 再実行は前後を比較できる
シミュレーション検証の設定
シミュレーション検証のデータは、一部をお客様のデータ条件に合わせ、一部をこちらの前提で設定しています。両者を分けて示し、判定欄には毎回実際に使った値も表示します。
お客様のデータに合わせる部分
- · データの長さ(週数)とチャネル数
- · 各チャネルの平均費用と増減の大きさ
- · 成果の平均水準
- · 予算が需要に連動する度合い(費用と成果の関係から推定。推定方法は暫定)
こちらの前提
- · 各チャネルの「既知の答え」:費用の多い順に 3.0、2.0、1.5、1.0、0.8、0.5 を割り当て
- · 効果は費用に比例し、持ち越し効果や飽和はない
- · 見えない需要は毎週前週の約8割を引き継ぐ。成果と費用にはそれぞれ約5%と15%のランダムな変動
- · 製品内の Meridian 検証は、数分で終わるよう短縮したサンプリングと少ない実行回数を使う
そのため、このテストでは分からないこと
- · 広告が実際にどれだけの売上をもたらしたか(実データには既知の答えがない)
- · 上記の前提を外れた状況(持ち越し効果、飽和、販促など)でモデルがどう振る舞うか
現在の判定しきい値(v0.1.0)
データ週数(Meridian のデータに関する推奨にもとづく)とチャネル相関(製品方針)を除き、以下のしきい値は暫定で、まだ研究で検証されていません。研究のシミュレーション結果が出たら新しい版として更新し、判定の見栄えのために調整することはありません。
- · データは26週以上、52週以上を推奨
- · 範囲が既知の答えを含んだ割合:70%以上で「支持されている」の可能性、45%未満で「支持されていない」
- · 既知の答えからの平均のずれ:15%以内で「支持されている」の可能性、40%超で「支持されていない」
- · チャネル比較:順位の一致度0.7以上、かつ最良チャネルを当てた割合75%以上。調整の方向:当てた割合60%以上
- · 2チャネルの費用の相関が0.8以上なら制約として表示
しきい値はどこから来るか
「0.9 を上回ること」のようなしきい値には、すべて出典を付けています。出典は 7 種類です。
- 文献
- 公表研究が推奨する値
- 標準
- 業界または方法論の標準
- モデル開発者の推奨
- モデルの開発者自身が書いた使い方の推奨
- シミュレーションテスト
- 正解がわかっているシミュレーションデータで測った値
- 実証
- 実データ上の経験値
- プロダクトポリシー
- プロダクトが明示する保守的なトレードオフ
- 暫定
- まだ十分な根拠がなく、暫定と表示
判定の語彙は固定されている
どの計測の問いも、最後に 1 つの判定になります。判定には次の言葉だけを使い、意味は変わりません。
- 支持されている現在のデータ・手法・前提のもとで、エビデンスはこの結論を支持している
- 条件付きで支持支持はあるが、併せて注意すべき点があり、判定が一つずつ挙げる
- 支持されていない現在のエビデンスはこの結論を支持しておらず、判定が理由を説明する
- 追加の証拠が必要結論を出すにはエビデンスが足りず、判定が何が欠けているか、何を補うのが最も有効かを示す
- 判定が古くなっていますデータや条件が更新され、元の判定はもう当てはまらないため、再検証が必要
地域別実験の判定方法
モデルとは別に、地域実験で広告効果をもう一つ推定できます。Proofseal は合成コントロール法で分析し、判定ルールは現在暫定の v0.1.0 です:
- 1実験前に最低 8 週のデータと、比較できる変更なしの地域が最低 3 つ必要です。満たさない場合は「追加の証拠が必要」です。
- 2実験前、比較グループとテスト地域の差が平均 10% 以内のときに結果を採用し、5% 以内なら精度が高いとみなします。
- 3テスト地域の差がすべての変更なし地域の自然なずれを上回り、比較できる地域が 9 以上あるとき「支持されている」と判定します。地域が少ない場合は最大で「条件付きで支持」です。
元の論文との違い:各地域を実験前の平均値で割ってから比較グループを作るため、規模が大きく異なる地域どうしでも比べられます。元の論文は元の数値のまま組み合わせます。この調整により、結果は金額ではなく「何 % 変化したか」で読むことになります。
判定をやり直すべきとき
判定は、作成時のデータのバージョン、手法のバージョン、検査条件を記録しています。データの更新、市場の変化、判定ルールの改訂があると、元の判定は当てはまらなくなることがあります。
データ更新後は、判定欄に「この判定は以前のデータに基づく」と表示されます。「判定をやり直す」で新しい判定が作られ、以前の判定も残るので比較できます。以前の判定を自動で「判定が古くなっています」とする機能は開発中です。
方法の出典と参考文献
Proofseal の手法は公表された研究にもとづいています。判定のしきい値と一部の調整はこちらで定めたもので、現在は暫定としています。主な文献と、Proofseal の中でそれぞれをどこに使っているかを以下に示します。
- Abadie, A., Diamond, A., & Hainmueller, J. (2010). Synthetic Control Methods for Comparative Case Studies: Estimating the Effect of California's Tobacco Control Program. Journal of the American Statistical Association, 105(490).
使いどころ:地域別実験の分析方法(合成コントロール法)とプラシーボ検定
- Abadie, A. (2021). Using Synthetic Controls: Feasibility, Data Requirements, and Methodological Aspects. Journal of Economic Literature, 59(2).
使いどころ:合成コントロール法を使う条件とデータ要件
- Vaver, J., & Koehler, J. (2011). Measuring Ad Effectiveness Using Geo Experiments. Google Inc.
使いどころ:広告の地域実験の設計と分析
- Ben-Michael, E., Feller, A., & Rothstein, J. (2021). The Augmented Synthetic Control Method. Journal of the American Statistical Association, 116(536).
使いどころ:合成コントロール法の拡張で、GeoLift が採用している方法
- Meta Open Source. GeoLift: an end-to-end solution for geo experiments (R package).
使いどころ:地域実験の計画(地域の選定、検出できる効果の見積もり)
- Jin, Y., Wang, Y., Sun, Y., Chan, D., & Koehler, J. (2017). Bayesian Methods for Media Mix Modeling with Carryover and Shape Effects. Google Inc.
使いどころ:マーケティング・ミックス・モデルのベイズ手法で、Meridian の土台
- Google. Meridian: an open-source marketing mix modeling framework.
使いどころ:計測に使うモデルの一つ
- Morris, T. P., White, I. R., & Crowther, M. J. (2019). Using simulation studies to evaluate statistical methods. Statistics in Medicine, 38(11).
使いどころ:正解がわかっているシミュレーションで統計手法を検証する枠組み(ADEMP)。モデル検証の根拠
リンク先はすべて学術誌や発行元の公式ページです。全文の閲覧に購読が必要な学術誌もありますが、大学や企業の図書館から無料で読めることが多いです。これらの文献は方法の出典を示すもので、著者や Google、Meta が Proofseal を推奨しているという意味ではありません。
オープンソースへの感謝
Proofseal は、公開された研究とオープンソースのプロジェクトに支えられています。計測には Google の Meridian を使い、地域別実験の計画は Meta の GeoLift を参考にしています。システム自体も Next.js、NestJS、FastAPI、NumPy、PostgreSQL などのオープンソースの上に作られています。成果を公開してくださっている皆さんに感謝します。
まず実際の判定を見る
サンプルプロジェクトは合成データで全体の流れを実行済みなので、各検査の結果と最終的な判定をそのまま確認できます。